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岡山地方裁判所 昭和39年(わ)206号 判決

法人の事務所

岡山県井原市井原町三、二八七番地の二

法人の名称

合資会社金原製箸所

法人の代表者の住居

法人の事務所に同じ

法人の代表者

金原良一

本籍並びに住居

法人の事務所に同じ

会社役員

金原良一

明治四一年二月二二日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官永瀬栄一出席のうえ審理をし、次のように判決する。

主文

被告人合資会社金原製箸所を罰金七〇万円に、

同 金原良一を懲役六月に、

処する。

被告人金原良一に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告会社と被告人金原良一との連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人合資会社金原製箸所(資本金三三〇万円)は、井原市井原町三、二八七番地の二に主たる事務所をおき、割箸の製造販売等の事業を営むもの、被告人金原良一は、右会社の代表者無限責任社員として右会社の業務一切を統轄しているものであるが、被告人金原良一は右会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて売上の一部および雑収入を会社正規帳簿に記載せず、架空に仕入れを行うなどの不正の方法により

第一、昭和三五年四月一日より同三六年三月末日までの事業年度において、会社の真実の所得金額が一、六九九万九、六〇〇円、これに対する法人税額六三五万六、二〇〇円であるのにかかわらず、同三六年五月三一日所轄笠岡税務署長に対し、所得金額を三三八万八、三〇〇円、これに対する法人税額一一八万三、九五〇円である旨虚偽の所得申告をなし、もつて右差額に対する法人税額四九〇万五二〇円の納付を免れ

第二、昭和三六年四月一日より同三七年三月末日までの事業年度において、会社の真実の所得金額が一、二七九万六、〇〇〇円、これに対する法人税額四七五万二、八八〇円であるのにかかわらず、同三七年五月三一日所轄笠岡税務署長に対し、所得金額を三七六万一、四〇〇円、これに対する法人税額一三一万九、七三〇円である旨虚偽の所得申告をなし、もつて右差額に対する法人税額三二八万五、〇六〇円の納付を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人の

1、当公判廷における供述

2、検察官に対する供述調書七通(八〇七丁以下)

3、収税官吏に対する質問てん末書六通(七七六丁以下)

一、証人矢野義正(六一四丁)、同西岡泰(六二七丁)、同三宅正俊(六五八丁、九一六丁、九六一丁)、同大崎利之(九四二丁)の当公判廷における各供述

一、当裁判所の証人三宅正俊(三〇四丁)、同川上昇(三四三丁)、同倉橋寿夫(三九五丁)、同大崎利之(七二九丁)各尋問調書

一、宮尾節三(四九丁)、平松寿夫(六六丁)、坂本松雄(六九丁)、桑本忠(七二丁)、橋本隆(七六丁)、中塚大二郎(七九丁)、三宅彬夫(一八七丁)、渡辺孝圭(四九七丁)、三宅裕(二通、五三〇丁、五三六丁)、西岡泰(五六三丁)、平田高照(三通、五六八丁、五七一丁、五七七丁)、川上昇(四通、一〇一五丁以下)、三宅正俊(三通、一〇四四丁以下)の各検察官に対する供述調書

一、三宅彬夫(一七八丁)、上ノ内新一(二三四丁)、金原由起子(二通、二三九丁以下)、金原誠一(二四六丁)、金原政雄(二五〇丁)、渡辺孝圭(五一七丁)、三宅裕(二通、五五一丁以下)、矢野福松(五九四丁)の収税官吏に対する各質問てん末書

一、下記の者の作成した証明書

井原郵便局長(五六丁)、広島郵政監察局岡山支局長(六二丁)、竹林良金(五通、八四丁以下)、富士銀行笠岡支店長(一〇一丁)、中国銀行総社支店長(一〇三丁)、三和銀行都島支店長(二通、一〇四丁以下)、中国銀行井原支店長(一〇六丁)、広島銀行井原支店長(一一九丁ないし一四七丁)、大阪銀行都島支店長(一四八丁)、第一銀行雷門支店長(一六三丁)、三村芳夫(二一七丁)、大和物産株式会社々長(二二八丁)、広島銀行大阪支店長(二二九丁)、神戸銀行尼崎支店長(二三〇丁)、西岡泰(五七四丁)、桑本忠(五八九丁)

一、下記の者の作成した上申書

竹林良金(九七丁)、豊松村森林組合長(一九八丁)、加茂町森林組合長(一九九丁)、柴田輝雄(二〇〇丁)、川上町森林組合大賀支所長(二〇一丁)、備後通運神鍋営業所長(二通、二〇二丁)、坂本松雄(二一八丁)、柏井富美子(二二二丁)

一、大東建設株式会社(二〇六丁)、富士銀行笠岡支店長(五九三丁)各作成の回答書

一、電話聴取書(六三丁)

一、広島銀行井原支店千代田商事名義普通預金元帳謄本(六五丁)

一、中塚製箸所作成売掛帳写(二二一丁)

一、川上昇(五九八丁)、倉橋寿夫(六〇一丁)各作成一覧表

一、収税官吏作成の現金有価証券現在高検査てん末書(四二六丁)

一、合資会社金原製箸所の登記簿謄本(四五丁)

一、押収の下記証拠物(昭和三九年押第九五号の一ないし四五、四七、四八、なお冊数など付記しないものは一冊、一綴、一束である。)定款及び議事録綴、法人税決議書綴、自昭和三五年四月至昭和三六年三月総勘定元帳、同総勘定補助元帳、同入出荷帳、同東京日報綴(六綴)、大阪日報綴(六綴)、日記帳、書翰(五通、三袋)、日報、印鑑、帳簿、入荷帳、備後通運車扱原票(三綴)、岡山県貨物未収台帳(二冊)、大東建設K・K、倉庫元帳綴(八冊)、日報(三綴)倉橋日報(二冊)、ノートブツク、奨励金計算書綴、備後通運車扱発送通知書(二綴)、印鑑(二個)、ゴム印(二個)、昭和三五年度給料支払明細書、雑書綴、ノートブツク、大東建設K・K、請求書綴(五綴)、豪渓製箸K、K、売掛帳、久米産業K・K、売上台帳、鳥取木材有限会社売上帳、自昭和三六年四月至昭和三七年三月総勘定元帳、同入出荷帳、同大阪日報綴(六綴)、同東京日報綴(六綴)、売掛金明細帳、岡山県貨物未収台帳(二冊)、ノート、未払金買掛明細帳、営業費内訳帳、買掛未払金帳、出納表(九綴)、製品出来高表綴(二四綴)、総勘定元帳

なお、判示各事業年度における真実の所得額と、その計算過程、法人税額の算出方法、勘定科目別金額確定についての証拠説明などの詳細は、別紙第一、第二、第三、第四のとおりである。

(弁護人の主帳に対する判断)

一、定期預金利息収入の帰属者について。

弁護人は、被告人金原良一が三宅正俊に命じて管理させていた定期預金は、その発生源を遡れば昭和三〇年に至り、同被告人が被告会社の代表役員となつた昭和三三年一〇月よりも遙か以前であつて、右定期預金の大部分、殊に少なくとも右代表社員に就任以前の分については、被告会社とは全く関係のない被告人金原良一個人の定期預金であるにかかわらず、これら定期預金をすべて被告会社の資産なりと断じ、その預金利息収入をすべて被告会社の収入とするのは不当である、と主張する。

押収のノート二冊(証二一・四〇)、証人三宅正俊の当公判廷における供述と、同証人作成の一覧表(九六五丁)によれば、定期預金額の変遷は大略次のように認められる。

即ち昭和三〇年に存した定期預金額 一、五七〇万円

〃 三一年中に発生した定期預金額 八六〇万円

〃 三二年 〃 〃 七三〇万円

〃 三三年 〃 〃 一、一五〇万円

〃 三四年 〃 〃 四一〇万円

〃 三五年 〃 〃 一、四〇〇万円

〃 三六年 〃 〃 四二〇万円

右によれば、昭和三〇年当時既に多額の定期預金が発生し、その後も逐年多額の増加を見たことをうかがうに十分であるけれども、これらが弁護人主張のように果して被告人金原良一が供述するように同人個人の株式ないし生糸取引や、美術骨とう品の売買、など個人的経済的活動に基因する利益より発生した個人資産であるかについてはなお慎重な検討を要するものと認められるところ、前掲各証拠よりすれば次のような事実が認められる。即ち、

イ、被告人金原良一の父であり被告会社前代表者金原末太郎は、昭和三六年八月死亡した(二四八丁参照)が、それより先昭和三〇年頃脳溢血にて倒れ以来病床にあつた(二三九丁裏、八〇〇丁参照)ものであり、被告人金原良一が実質的な会社代表となつたのは弁護人主張よりも以前であると認められること。

ロ、調査を受けた当初、被告人金原良一は、骨とう類、株式、ハツカなどの売買利益によつて個人的に相当の財産をつくつた旨供述していたが(七八〇丁以下参照)、その後右供述を取消し、それらは殆んど言うに足りないと供述していること(七八七丁以下)に加え、右預金発生源たる個人的取引についての納得できる証拠のないこと。

ハ、被告人金原良一が被告会社より得ていた給与の外、家賃収入、株式配当など個人的に費消しうる金銭は、殆んど一家の生活費などの使途に費消されている(八〇〇丁)と認められ、到底前記のような多額の預金を発生せしめるほどの余裕があつたものとは認められないこと。

ニ、昭和三一、二年頃から既に公表帳簿外の製品の販売を東京で始め、別途送金していたが、右は被告人金原良一の指示によつたものと認められること(四九七丁、五一七丁)。

ホ、遅くとも昭和三三年頃から千代田取引、取引が開始されており、トツキン、芯木の簿外売上も又発生していたと認められる(四九丁、二四三丁、一〇二五丁)うえ、その以前においては岡山物産という名称を使用して取引していたと認められること(七六丁、一〇五丁裏)。

などよりすれば、前記の定期預金は被告人金原良一個人に帰属すべきものと認めるよりはむしろ、被告会社の資産に属すべきものと認めるのが相当である。従つて右の預金利息も又会社の所得に帰属するのは当然である。

二、トツキン、芯木等の副産物の売上利益について。

右については、別紙第三、二、/、に説明のとおり、判明しない期間については推定計算を行なつているものであるが、弁護人は、かかる推定計算は厳格かつ高度の証明を要する刑事裁判手続においては許されないことであり、又右の副産物を被告会社において、箸の生産工程中の必要燃料として自家消費しているのにかかわらずこれらが一切考慮されない結果となり一層不当である。と主張する。

刑事裁判手続における証明は、もとより安易なものであるべきではなく、高度の蓋然性、真実性を具有するものでなればならぬこと勿論ではあるが、しかしその証明過程に推定を全く許さないものと解しがたく、その推定方法にして客観的、合理的、かつ普遍妥当的なものであり、しかもその結果えられるものに、信頼に値する高度の蓋然性、真実性があると認められるものであれば、このような推定方法を利用することは許されるものと解されるところ、本件においてなした推定計算の方法とその結果が信頼に値する真実性、蓋然性を具有するものであると認められることは別紙証拠説明にあるとおりである。

次に自家使用の点についは、

イ、三光木材株式会社から被告会社ボイラー燃料用として鋸屑を購入しており(二四七丁)、その代金が毎月燃科費としてほぼ恒常的に支払われていること(証四、四二の各燃料費勘定参照)。

ロ、トツキン、芯木等の売上金が判明する期間中の売上は、川上昇らの作成した一覧表(五九八丁、六〇一丁)によれば昭和三五年についていえば、一〇月、一一月が幾分少ない外は毎月少なくとも一〇万円以上の売上があり、季節的に燃料を多量に消費すると考えられる寒季においてその売上の皆無ないし顕著な減少の事実のないこと。

(この点、二カ月位全くトツキン、芯木を引き取らなかつたことがあつた、という証人矢野義正の証言(六一四丁)はたやすく信用できない。)

ハ、証人倉橋寿夫は、副産物の売上の判明しない月のうち四月は、ボイラーの定期検査のため二週間位休業することがあり、生産が減少するに伴いトツキン、芯木の副産物も減少する、と証言しているが(四一二丁)、昭和三五年四月の出勤簿(証四四の四)によれば、一斉休業は二二日ないし二六日の五日間と認められ、二週間にも亘る休業の事実が全くないことはともかくとして、前記推定計算は生産俵数を基準としており、暦日数を基準とするものではないから、右証言は全く当らないものであること

などよりすると、前記副産物を自家使用したとの点は、全く架空の事実とは断じがたいとは言え、しかもなお多量の売却分があつたことも認めざるをえない。

三、取引の利益金について。

弁護人は、被告会社が、西岡泰の経営する成羽製箸株式会社と有限会社矢掛製箸工場から昭和三五、六年中に仕入れた箸が少なくとも一二〇万円相当位あるから、右相当額は取引の利益金より控除されるべきであると主張する。

その主張するような額の取引があつたことは証人西岡泰の証言(一六二七丁)からもうかがえるとろではあるが、右証言にも明らかなように、同人は被告人金原良一と打ち合わたうえ、これらの売上については互に正規帳簿に記載しないこととしており、西岡泰の右のような売上脱ろうが発覚したのが昭和三六、七年頃と認められ(弁第一、二号証参照、七二五丁以下)るにかかわらず、その後の国税局よりの照会に対する回答証明書(五七四丁)によれば、それに記載された簿外売上は被告会社側の簿外仕入に関する帳簿(証一四)中の〈ナ〉成の記載と全く符合し、その他に取引のあつた事実は全く認められず、しかもそれら取引総額は一二〇万円をはるかに越えているのであつて、これら事実よりすれば弁護人主張する右一二〇万円相当額は別紙第三、一四製品仕入の中に計上されている分の中に含まれているものと認められ、その他に更に一二〇万円相当額の取引があつたものとは認められない。西岡泰の検調(五六三丁)も右認定に反するものとは認められない。

四、千代田取引について、

弁護人は、被告人金原良一が、千代田或いは千代田商事なる名義を用いて、被告会社の製品を販売したのは、被告会社の営業とは全く無関係な被告人金原良一個人の取引である、と主張する。

しかしながら、前掲証拠により千代田取引の全過程を考察すれば、被告会社の仕入れた原材を用い、被告会社の生産設備を利用し、被告会社従業員の手によつて生産出荷された製品を、被告人金原良一が個人として購入販売したものではなく、専ら東京あるいは大阪の被告会社駐在員をして別途手当を支給することもなく販売させ、よつて得られた売上利益より販売諸経費、送金料などを支弁した残金を被告人金原良一宛送金させ、それより被告会社の工員給料、製品運賃など別途支弁し、時に応じては被告会社の資金としても利用し、他方三宅彬夫に指示して架空仕入を計上させていることが前掲各証拠より明らかに認められるところであつて、これら事実に徴すれば千代田取引が被告人金原良一の個人的取引であることは到底認めがたいこと多言を要しないものと考えられる。

以上の次第であるから弁護人の主張はすべて理由がない。

(法令の適用)

被告人金原良一の判示第一、第二の各所為は、いずれも昭和三七年法律第四五号附則一一項により適用される同法による改正前の法人税法四八条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、右は法人の代表者たる同被告人が被告会社の業務に関し右の違反行為をなしたものであるから同法五一条一項により同法四八条一項所定の罰金刑を被告会社に科することとし、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人金原良一については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役六月に処し、被告会社については同法四八条二項により合算した罰金額範囲内で罰金七〇万円に処し、被告人金原良一については犯罪後の情状その他諸般の情状を考慮し刑法二五条一項によりこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとし、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人と被告会社との連帯負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 谷口貞)

別紙 第一

(一) 自昭和三五年四月 一日 至同 三六年三月三一日 修正損益計算書

収入の部

〈省略〉

支出の部

〈省略〉

以上のうち、当期増減額については別紙第三のとおりであり、公表金額(ただし3、14、25、37、を除く)は、法人税裁定決議書綴(証二)中の被告会社当期分決算書類により明らかである。

又、公表金額3、14、25、37については、右決算書類上の各金額に、次のような調整を加えて算出される金額であり、これらの算出根拠は、右証二、中の当期分に関する更正再更正、関係書類より明白である。(△印は減算)

〈省略〉

(二) その他所得の内容(△印は減算)

〈省略〉

右各金額とその取扱いについては、法人税裁定決議書(証二)中の当期事業年分に関する更正及び再更正決定関係書類による。

以上により当期所得金額は、

当期利益金 一六、二八四、四二〇円

その他所得 七一五、二六二円

計 一六、九九九、六八二円となり

申告すべき所得額 一六、九九九、六〇〇円となる。

(三) 逋脱税額の算出

1、調査所得額 一六、二八四、四〇〇円

2、うち二〇〇万円の三三%相当額 六六〇、〇〇〇円…………(A)

3、1より二〇〇万円を控除した額 一四、二八四、四〇〇円

4、右3の三八%相当額 五、四二八、〇七〇円…………(B)

5、(A)(B)合計 六、〇八八、〇七〇円

6、控除税額 三、六〇〇円

7、差引法人税額 六、〇八四、四七〇円

8、申告法人税額 一、一八三、九五〇円

9、右7より8を控除した額(逋脱額) 四、九〇〇、五二〇円

以上

別紙 第二

(一) 自昭和三六年四月 一日 至同 三七年三月三一日 修正損益計算書

収入の部

〈省略〉

支出の部

〈省略〉

以上のうち、当期増減額については別紙第四のとおりであり、公表金額(ただし3、15、24を除く)は、法人税裁定決議書綴(証二)中の被告会社当期分決算書類により明らかである。

又公表金額、3、15、24については、右決算書類上の各金額に、次のような調整を加えて算出される金額であり、これらの算出根拠は、右証二、中の当期分に関する更正関係書類より明白である。(△印は減算)

〈省略〉

(二) その他所得の内容(△印は減算)

〈省略〉

右各金額とその取扱いについては、法人税裁定決議書綴(証二)中の当期事業年度分に関する更正決定関係書類による。

以上により当期所得金額は

当期利益金 一二、四〇六、三〇二円

その他所得 三八九、七四一円

計 一二、七九六、〇四三円となり

申告すべき所得額 一二、七九六、〇〇〇円となる。

(三) 逋脱税額の算出

1、調査所得額 一二、四〇六、三〇二円

2、うち二〇〇万円の三三%相当額 六六〇、〇〇〇円…………(A)

3、右より二〇〇万円を控除した額 一〇、四〇六、三〇二円

4、右3の三八%相当額 三、九五四、三九四円…………(B)

5、(A)、(B)合計額 四、六一四、三九四円

6、控除税額 九、六〇〇円

7、差引法人税額 四、六〇四、七九〇円

8、申告法人税額 一、三一九、七三〇円

9、右7より8を控除した額(逋脱額) 三、二八五、〇六〇円

別紙 第三

自昭和三五年四月 一日 至同 三六年三月三一日 当期増減額の証拠説明

一、製品売上 二五、二五二、一七二円

以下の1、ないし4の合計額である。

1、千代田関係売上 一八、九二五、五五〇円

帳簿(証一四)中の「製品売上」勘定の記載による。これらの売上金が広島/井原(広島銀行井原支店の略。以下これに準ずる)の千代田商事名義普通予金口座に送金入金されたことは、渡辺孝圭(四九七丁)、三宅裕(昭和三九年五月六日付、以下年月日を略す。五三六丁)の各検察官に対する供述調書(以下検調と略す。)、広島/井原の千代田商事名義普通予金元帳謄本(六五丁)によつて明らかである。

2、大阪関係売上 一、二六四、五〇〇円

三宅裕の昭和三九、五、六、付検調(五三六丁)、これらの売上があつたことは、書翰三通(証一一)及び入荷帳(証一五)により明白であり、右書翰に記載された入荷量に対応する出荷の記載が日記帳(証八)中にある。更に右書翰(証一一の三にある送金明細に対応して井原郵便局に入金があつたこと、及びその送金料は、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、広島郵政監察局岡山支局長作成証明書(六二丁)、電話聴取書(六三丁)によつて明らかである。右入金がそのつど広島/井原の原田君代名義普通預金口座に預け入れられていることは右預金口座元帳謄本(一四七丁)によつて認められる。

3、東京関係売上 四、八九四、六二二円

その内訳は、送金額 四、五二〇、〇〇〇円

送金料 一九、四八五円

倉敷料 五六、二三四円

上の内運送への支払運賃 九七、八〇三円

(単価 五七円四三×一七〇三)

期末売掛金 二〇一、一〇〇円

である。右は渡辺孝圭の検調(四九七丁)の外に、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、広島郵政監察局岡山支局長作成証明書(六二丁)、電話聴取書(六三丁)、広島/井原の神心講、不二講名義普通預金元帳謄本(一四七丁)によつて送金額、送金料が明らかである。倉敷料は大東建設K、K、作成回答書(二〇六丁)、同社請求書綴(証三〇)によつて裏付けられる。

上の内運送への支払運賃算出の根拠となる一俵当り運賃単価五七円四三銭は、渡辺孝圭の検調別表(五一六丁)により明らかであり、売上俵数一七〇三俵は、

送り合計一、七二六俵+期首在庫八五俵-期末棚卸一〇八俵=一、七〇三俵として算出される。この送り合計一、七二六俵の内訳は、日記帳(証八)、備後通運車扱発通知書(証二三の一)より

〈省略〉

の外に、昭三六、二、一九に二五五俵出荷され、それが二、二四に一八五俵だけ大東建設K、K倉庫の入江忠口座に入荷されており、この二五五俵も関係の出荷と認められることが、前記証二三の一及び入出荷帳(証五)、大東建設K、K、倉庫元帳綴(証一八の八、No.一六三〇の分)により明らかであるから、結局送り合計は一、四七一+二五五=一、七二六となる。

期首在庫八五俵、期末棚卸一〇八俵については、渡辺孝圭の検調(四九七丁)の外、大東建設K、K、倉庫元帳綴中の証一八の六のNo.一二二、No.一五一に期首在庫分が、又同証一八の八のNo.一六三〇に期末棚卸分がそれぞれ記帳されていることより認められる。

期末売掛金については、後記別紙第四の昭和三六事業年度についての証拠説明一、製品売上中の期首売掛金の算出方法についての説明のとおりである。

4、牧野屋関係売上 一六七、五〇〇円

総勘定補助元帳(証四)中の「製品売上」勘定の記載と、K、K、牧野屋商会代表者竹林良金作成証明書(八四丁ないし九六丁)との対照によつて明白であり、広島/井原の不二講山中茂名義普通預金元帳に昭三六、三、六、入金されていることは同預金元帳写(一四七丁)によつて認められる。

二、雑収入金 四、六九八、三二九円

以下の1、2、3の合計である。

1、トツキン等売上金脱ろう 一、六九〇、七一九円

トツキン、芯木等売上金脱ろうのうち、日報(証一二)により確定する昭三五、五・六・七月分および倉橋日報(証二〇)の二、一九の二)により昭三五、一〇、九、ないし昭三六、三、三一、分

(A)……一、二四八、五二〇円

右金額の各月別金額は、川上昇、倉橋寿夫各作成の「トツキン、芯木売上金額表」(五九八丁、六〇一丁)のとおりであり、右日報、倉橋日報の正確性については、証人川上昇、同倉橋寿夫各尋問調書(三四五丁、三九七丁)および日報(証一二)と倉橋日報(証二〇の一)の各昭三五、五・六・七月分とを対比すれば明らかである。

そして、右の売上金が判明する期間中の公表生産俵数は、右「トツキン、芯木売上金額表」およびその基礎となる入出荷帳(証五)により

(B)……一三、一七九俵

となる。

(右(B)の数量につき、検察官は、入出荷帳の記録より算出し、一三、一五七俵となる、と主張しているが、被告会社の担当者らによつて作成された右「トツキン、芯木売上金額表」の方をより信用性の高いものと認める。しかも、このように認定することは、後記のように製品一俵当りトツキン、芯木の売上高を算出するうえで被告人らに有利である。

A÷B=九四円七三銭五厘……一俵当りトツキン、芯木の売上高

次に、トツキン、芯木等売上の判明しない期間中の公表生産数量は、入出荷帳(証五)、出来高表綴(証四五の七)によれば、次のようになる。

〈省略〉

右四、七〇五俵より期首在庫三三俵を除いた四、六七二俵が右期間中の公表生産数量となる。

この俵数につき、検察官は四、六八九俵となる、と主張し、又一〇月分について右「トツツン、芯木売上金額表」にある川上、倉橋の計算によるとすれば四、六六八俵となり、そのいずれによるべきか決しがたいので、結局被告人らに有利に、四、六六八俵と認定する。

従つて右売上の判明しない期間中のトツキン、芯木の売上高は

(C) 九四、七三円×四六六八(俵)=四四二、一九九円

と推定される。そこで、トツキン、芯木の合計売上額は

(A)+(C)=一、六九〇、七一九円 となる。

(以上の推算方法の信憑性の高いことは、昭和三七事業年度中途において、被告会社が所轄税務署にこれら雑収入脱ろうを発見され、同年分を公表雑収入金に一括計上したが、そのうち前半分は後半の実績を基とし、以上と同ようの計算方法で推計計上していることからも明らかである。被告人金原良一(昭三九、五、一五、付、八一八丁)の検調、総勘定元帳(証四八)中の雑収入金勘定のうち、昭三八、三、三一、らんの記載、法人税裁定決議書綴(証二)中の被告会社の昭三七事業年度の決算書類参照)

2、簿外定期預金利息 二、九二五、六四六円

その内訳と証拠は次のとおりである。

九四一、九七〇円 富士/笠岡支店長作成

証明書(一〇一丁)

三二、八七〇円 中国/総社〃 〃

(一〇三丁)

一、五一四、八六六円 広島/井原〃 〃

(一三六丁)

一八一、五四〇円 中国/井原〃 〃

(一〇六丁)

二五四、四〇〇円 富士/笠岡〃 〃

(五九三丁)

右に対応する被告側の帳簿としてはノート(証四〇)がある。

3、簿外普通預金利息 八一、九六四円

その内訳と証拠は次のとおりである。

〈省略〉

三、棚卸製品 三〇三、六二七円

以下の(A)、(B)の合計である。

1、東京関係期末在庫一〇八俵

右は大東建設K、K、倉庫元帳綴(証一八の八)中の寄託請書No.一六三〇入江忠名義分によつて認められ、その内訳は、上小判九〇俵、二等六寸小判三俵、桜ケーキ一五俵である。これらの棚卸単価は、証人大崎利之の証言(九五三丁)により梅ケーキが九三六円、その他は、二、七七一円と認められるから

二、七七一円×(九〇+三)+九三六円×一五=二七一、七四三円…………(A)

2、大阪関係期末在庫 一二俵

右は入荷帳(証一五)によつて認められ、内訳は二等六寸小判一俵、六寸小判一一俵である。これらの各棚卸単価は右大崎証人の証言により二、六五七円と認められるから

二、六五七円×一二=三一、八八四円…………(B)

四、素材架空仕入 二、五五二、二七七円

総勘定補助元帳(証四)中の素材勘定によれば、当期において次のような素材の仕入れがある。

豊松森林組合 一、〇一〇、〇〇〇円

大賀森林組合 七三七、〇〇〇円

加茂森林組合 八〇五、二七七円

しかし、これらの仕入れが架空であることは、三宅彬夫の検調(一八七丁)、豊松村森林組合長(一九八丁)、岡山県加茂町森林組合(一九九丁)広島県加茂町事務吏員(二〇〇丁)、川上町森林組合大賀支所長(二〇一丁)各作成の上申書、印鑑、ゴム印各二個(証二四、二五、二六)によつて明らかである。

五、期首棚卸製品 二、六五四、七三七円

この内訳は次のとおりである。

〈省略〉

本社在庫量二四三俵は、奨励金計算表綴(証二二)と入出荷帳(証五)との対比により算出される簿外生産量と、備後通運車扱発送通知書(証二三)と入荷帳(証五)との対比により算出される簿外出荷量とを、比較検討して算出されるが、その内容は次のとおりである。

〈省略〉

これらのうち、桜ケーキ、梅ケーキの単価が七二一円、その他の単価が二、五五七円であることは証人大崎利之の証言(九五三丁)で明らかであるから、

二、五五七円×(一二一+三五+三八+七)+七二一円×(三九+三)=五四四、二三九円

となる。

本社千代田在庫量四俵、単価二、七五〇円は、豪渓製箸より昭三五、二、一六、に仕入れた一五五俵のうち昭三五、二、二四、出荷した残であり、しかもそれが昭三五、四、六、に更に発送されていることが帳簿(証一四)、備後通運車扱通知書(証二三)、日記帳(証八)、豪渓製箸売掛帳(証三一)により確定できる。

東京在庫量八五俵は、大東建設K、K、倉庫元帳綴(証一八の六)中の寄託番号一二二の一二俵と、寄託番号一五一の七三俵とであつて、一二俵は昭三五、一、九、入荷の上小判四二俵中の残であり、又七三俵は昭三五、一、一九、入荷の上小判であることが認められ、これらの単価が二、七七一円であることは前記証人大崎利之の証言九五三丁で明らかであるから

二、七七一円×八五=二三五、五三五円

となる。

東京千代田在庫六八三俵とその金額に関する証拠は次のとおりである。

〈省略〉

以上により在庫は六八俵

金額は一、八六三、九六三円

となる。

右のうち加算運賃については、帳簿(証一四)中の東京経費勘定に次のように運賃を被告会社で支払つていることが明らかであるから、棚卸価格に加算するものとする。

〈省略〉

六、給料賃金 六八八、九二七円

次の1、2合計である。

1、自社製品の一部を除外するにともない、女子工員の出来高給の一部を簿外で次のように支払つている。

〈省略〉

右の事実は、証人川上昇尋問調書(三四五丁)、川上昇作成の一覧表(五九九丁)、奨励金計算綴(証二二)、日記帳(証八)、給料支払明細書(証二七)雑書綴(証二八)によつて明らかであるが、他方、総勘定補助元帳(証四)中の給料勘定らんに記載されている各月の給料支払日に、それぞれ上記の給料が、広島/井原の神心講不二講名義普通預金口座から引き出されていることが広島/井原支店長作成証明書(一四七丁)によつて認められることからも裏付けられる。

2、金原良一給料 三六〇、〇〇〇円

帳簿(証一四)中の給料勘定から認められる。

七、賞与金 八〇、〇〇〇円

ノートブツク(証二九)中の受領証によつて認められる。

八、諸利息 一〇、五六九円

広島/井原より金原毅八郎名義借入金利息であつて、帳簿(証一四)中の諸利息勘定の記載から認められ、対応する銀行帳簿として広島/井原支店長作成証明書(一四一丁、一四二丁)がある。

九、未払事業税 四四五、四二〇円

事業税の期中納付額は、総勘定補助元帳(証四)中の諸税勘定によると次のとおりである。

昭三五、五、三〇 県税事務所 四九、二〇〇円

〃 五、三一 大阪府税事務所 二、二六〇円

〃 一一、一六 県税事務所修正分 三三、三八〇円

〃 一一、二一 大阪府税事務所修正分 一、五四〇円

計 八六、三八〇円

他方法人税裁定決議書綴(証二)中の当期分再更正関係資料によると、調査事業税は五三一、八〇〇円であると認められ、上記四口分計八六、三八〇円を差引き、四四五、四二〇円が未払事業税である。

一〇、雑費認容 一〇七、一九五円

帳簿(証一四)中の雑費勘定の記載より

三二六、〇五五円

の支出が認められるが、このうち清水出荷手数料

昭三五、五、一三 一九、一五〇円

は当期分ではなく、又金原良一への 〃 八、一三 一〇〇、〇〇〇円

は雑費とは認められず、更に備後通運 〃 五、一七 三一、五八〇円

〃 七、一 三一、五八〇円

〃 八、三〇 一九、九八〇円

県貨物 〃 八、一〇 一六、五七〇円

の四口は、総勘定補助元帳(証四)中の製品運賃勘定中に計上されているので控除する。

以上六口 二一八、八六〇円

を差引いた残が雑費認容額となる。

一一、製品運賃 三三五、九六〇円

次の1、2、3の合計である。

1、備後通運神辺営業所支払 三〇八、五六〇円

右は備後通運K、K、神辺営業所長作成の上申書二通(二〇二丁)と総勘定補助元帳(証四)中の運賃勘定の記載との対比より明らかである。

2、県貨物支払 二四、一五〇円

帳簿(証四)中の製品勘定のうち井原県貨物への支払の記載と、岡山県貨物未収台帳二冊(証一七)とを対比すると、証一七に記載されている次の運賃が証四に記載されていない。

昭三五、八、八 三三俵 二、一五〇円

〃 一〇、六 一四〇俵 九、〇〇〇円

〃 一一、二八 五〇俵 三、二五〇円

〃 一二、一五 五〇俵 三、二五〇円

昭三六、一、二九 五〇俵 三、二五〇円

〃 三、一四 五〇俵 三、二五〇円

合計 二四、一五〇円

以上のうち、昭三六、一、二九分、三、一四分については大阪営業所の入荷帳(証一五)にその旨入荷の記載があり、その余の分については、日記帳(証八)中にそれぞれ対応して出荷し記載があることからも裏付けられる。

3、県貨物扱牧野屋送分 三、二五〇円

岡山県貨物未収台帳(証一七の二)中、昭三五、一二、二五、らんに一五〇俵大阪迄運送し、その運賃受領の記載があるにかかわらず、うち一〇〇俵についてのみ総勘定補助元帳(証四)中製品運賃勘定の昭三五、一二、二八らん、および牧野屋商会代表者竹林良金作成証明書(九四丁)中の昭三五、一二、二六らんに各計上されており、残り五〇俵については簿外として処理されている。この簿外処理の事実は、同上証明書(八六丁)の昭三五、一二、二六らん、日記帳(証八)中の昭三五、一二、二五らん、の各記載によつて明らかである。右五〇俵分の運賃である。

一二、東京営業所経費 一、〇七九、八四五円

次の1、2の合計である。

1、千代田関係経費 九〇六、三二三円

帳簿(証一四)中の東京経費勘定の記載から明らかである。右記載のうち送金料、倉敷料については、渡辺孝圭の検調添付別表(五一三丁、五一五丁)および大東建設K、K、作成回答書(二〇六丁)とも合致している。

2、関係経費

送金料 一九、四八五円

倉敷料 五六、二三四円

上の内運送への支払運賃

九七、八〇三円

右については、前記一、製品売上の3東京関係売上中の説明を引用する。

一三、大阪営業所経費 二四、九五三円

次の1、2の合計である。

1、千代田関係経費 二一、四〇八円

帳簿(証一四)中の大阪経費勘定中の記載による。

2、関係送金料 三、五四五円

三宅裕の昭三九、五、六付検調添付別紙(五五〇丁)による。

一四、製品仕入 一四、四八二、七〇〇円

次の1から、2、3、4を差引いた額である。

1、簿外の製品仕入額 一四、四九五、二五〇円

帳簿(証一四)中の仕入商品勘定中の当期仕入額の記載による。

2、久米産業仕入値引 三、二〇〇円

右帳簿中の久米産業勘定中の記載による。

3、大島産業仕入値引 六、五〇〇円

右帳簿中の大島産業勘定中の記載による。

4、前記仕入計上もれ 二、八五〇円

右帳簿中の仕入商品勘定中の昭三五、五、二四らん、鳥取木材有限会社勘定中の昭三五、五、二一らんの記載による。

右の仕入があつたことは、日記帳(証八)中に一部対応する記載があること、豪渓製箸K、K、売掛帳(証三一)中の千代田商事勘定、久米産業K、K、売上台帳(証三二)中の岡山物産勘定、鳥取木材有限K、売上帳(証三三)中の金原良一勘定、三村芳夫作成の証明書(二一七丁)、坂本松雄作成の上申書(二一八丁)、西岡泰作成の証明書(五七四丁)、等各仕入先に、各対応する売上記載のあること、帳簿(証一四)中の各仕入先に対する代金支払の記載に対応する預金引出の事実が広島/井原の千代田商事名義普通預金元帳謄本(六五丁)に記載されていること、から明らかである

以上

別紙 第四

自昭和三六年四月 一日 至同 三七年三月三一日 当期増減額の証拠説明

一、製品売上 四、六四二、二四五円

次の1、2、3の合計である。

1、東京関係売上 一、九六五、七四五円

これは当期送金額二、〇九〇、〇〇〇円+東京経費七一、四七二円-期首売掛金二〇一、一〇〇円+前期未払倉敷料五、三七三円=一、九六五、七四五円として算出される。

そして、当期送金額は渡辺孝圭の検調(四九七丁)の外に、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、広島郵政監察局岡山支局長作成証明書(六二丁)によつて明らかである。右送金はそのつど広島/井原の不二講に預金されていることが右預金元帳謄本(一四七丁)に明らかである。

東京経費については後記六、営業費、3、東京経費の説明のとおりである。

期首売掛金については、右当期送金額によれば、四月、五月の送金計五二〇、〇〇〇円であるが、荷送がないところから、右五二〇、〇〇〇円は「前期売掛金+期首在庫一〇八俵分の売上」と認められ、従つて売掛金は

五二〇、〇〇〇円-一〇八俵分の売上=売掛金

として算出される。そして右一〇八俵の内訳は、前期分証拠説明(別紙第三三、棚卸製品の項にあるように、上小判九〇俵、二等六寸小判三俵、梅ケーキ一五俵であつて、それらの売却単価は売掛金明細帳(証三八)により、上小判、二等六寸小判については三、三〇〇円、梅ケーキについては八〇〇円が概ね妥当な単価であると認められ、一〇八俵の売上金は、

三、三〇〇円×九三+八〇〇円×一五=三一八、九〇〇円

となり、売掛金は

五二〇、〇〇〇円-三一八、九〇〇円=二〇一、一〇〇円

となる。

前期未払倉敷料は、大東建設K、K、作成回答書(二〇六丁以下のうち二一三丁)大東建設K、K、請求書綴(証三〇の五中の三月分「入江忠」名義分)によつて明らかである。

なお、この期間の売上俵数は期首一〇八俵+送付四七五俵=五八三俵であつて、右送付分については、備後通運車扱発送通知書(証二三の一、二)によつて認められる発送数量と、入出荷帳(証三五)の東京関係分入荷数量とを突き合わせることにより、昭三六、六、一五発送分二三〇俵と、昭三六、一一、一一発送分二四五俵の計四七五俵分を除いては全く照合していることが認められ、右二口分がこれに当る。

2、大阪関係売上 二、〇一三、五〇〇円

これらの売上があつたことは、三宅裕の昭三九、五、四付検調(五七七丁)、入荷帳(証一五)、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、広島郵政監察局岡山支局長作成証明書(六二丁)、広島/井原の原田君代、能登一記名義普通預金元帳謄本(一四七丁)により認められる。

3、牧野屋、大和物産関係売上 六六三、〇〇〇円

本社より直送した分であり、そのうち大和物産については

昭三七、二、九 五〇俵 一四〇、〇〇〇円

であつて、右は大和物産K、K、事務員柏木富美子作成の上申書(二二二丁)により認められる。牧野屋について

昭三六、六、一六 五〇俵 一四五、〇〇〇円

〃 一一、一六 七〇俵 二三八、〇〇〇円

昭三七、三、二一 五〇俵 一四〇、〇〇〇円

であつて、右は売掛金明細表(証三八)の牧野屋勘定の記載と牧野屋商会代表者作成証明書(八四丁)、上申書(九七丁)との対比によつて認められる。その売却代金は広島/井原の不二講口座に昭三六、九、二九、昭三七、三、一三、昭三七、七、一一と、それぞれ入金されていることが広島/井原支店長作成証明書により認められる。

これらの輸送についてはなお後記六、5の製品運賃に関する証拠からもうかがえる。

二、雑収入金 五、〇三五、六九五円

次の1、2、3の合計である。

1、トツキン等売上 一、七四二、一七九円

当期の入出荷帳(証三五)の工場勘定の記載によれば当期の生産高は合計一八、三八九俵であり、その内訳は次のとおりである。

〈省略〉

更に昭三七、三、三一現在未整俵のもの二俵分があるが、これは製品出来高表綴(証四七の一二)により同日現在未整俵の六寸小判二束、桜ケーキ三束、梅ケーキ二束を俵数に換算したものである。

以上合計一八、三九一俵に対し単価九四、七三円を乗じて右売上が算出される。

右単価は、前期分トツキン売上脱ろうの算出に用いたものと同じであり、これが信頼性については、右単価算出の項での説明を引用する。

2、簿外定期預金利息 三、二一七、一三〇円

その内訳と証拠は次のとおりである。

四五、〇〇〇円 広島/井原支店長作成証明書(一二九丁)

一、七四六、九三〇円 〃 (一三四丁)

一二〇、〇〇〇円 中国/井原 〃 〃 (一一〇丁)

四〇、八〇〇円 中国/総社 〃 〃 (一〇三丁)

八四四、四〇〇円 広島/大阪 〃 〃 (二二九丁)

四二〇、〇〇〇円 神戸/尼崎 〃 〃 (二三一丁)

右に対応する被告側の帳簿としては、ノート(証四〇)がある/又定期預金証書の存在したことは、現金有価証券等現在高検査てん末書(四二六丁)により認められる。

3、簿外普通預金利息 七六、三八六円

その内訳と証拠は次のとおりである。

〈省略〉

三、棚卸製品 一四八、七九二円

大阪営業所において、関係製品当期末在庫五六俵(六寸小判四〇俵、八寸小判一六俵)あることが入荷帳(証一五)、三宅裕の昭三九、五、四検調(五七七丁)により認められる。その棚卸単価は前期分証拠説明三、2で説明のとおり、二、六五七円であるから

二、六五七円×五六=一四八、七九二円となる。

四、期首製品 三〇三、六二七円

その内容は前期棚卸製品に同じであり、前記三、の説明のとおりである。

五、素材架空仕入、一、三四一、〇〇〇円

未払金買掛明細帳(証四一)中の豊松森林勘定によれば、当期において豊松森林組合からの右仕入がある。しかしこの仕入が架空であることは、三宅彬夫の検調(一八七丁)、豊松村森林組合長作成上申書(一九八丁)、印鑑、ゴム印各二個(証二四、二五、二六)によつて明らかである。

六、営業費 二、二一九、二三五円

次の1ないし6の合計である。

1、女子工員簿外給料 二七二、二八三円

内容は前期六、1と同じで、月別支払額は次のとおりである。

〈省略〉

証人川上昇尋問調書(三四五丁)によれば、昭三六年度においても前期同よう女子工員に対し簿外の給料が支払われていたことが認められ、営業費内訳帳(証四二)中の給料勘定らんに記載されている各月の給料日に対応して、それぞれ上記の給料が広島/井原の不二講名義普通預金口座から引き出されていることが、広島/井原支店長作成証明書(一四七丁)によつて認められる。

2、賞与金 一〇七、〇〇〇円

ノートブツク(証二九)中の受領証によつて認められる。

3、東京営業所経費 七一、四七二円

内訳は

入江忠名義倉敷料 七、二七四円

送金料 八、四四〇円

上の内運送への支払運賃 五五、七五八円

右のうち、倉敷料については、大東建設K、K、作成回答書(二一三丁)、大東建設K、K、請求書綴(証三〇の五)により、送金料については渡辺孝圭の検調添付別紙(五一四丁)の外に、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、電話聴取書(六三丁)により、又上の内運送への支払運賃は、渡辺孝圭の検調添付別紙(五一六丁)記載の一俵当り運賃単価九五、六四円に、当期売上俵数(前記一、1、参照)五八三俵を乗じてえられる。

4、大阪営業所経費 二一、四七〇円

これは、当期売上金と送金額の差に当期末売掛金を加え、かつ期首売掛金を減じて算出される二二、一二〇円(この計算方法とその根拠となる数字についての証拠は、昭三九、五、四付三宅裕検調(五七七丁)にあり。)より前期末未払金六五〇円(昭三九、五、六付三宅裕検調添付別紙(五四九丁、五五〇丁)にあり、昭三六、三、三一送金分の送金料で、井原郵便局長作成証明書(五八丁)、電話聴取書(六三丁)により算出される。)を減じたものであり、当期の送金料六、五三〇円(昭三九、五、四付三宅裕検調添付別紙五八八丁にあり)を含んでいる。

5、製品運賃 一三九、六六〇円

内訳は

東京営業所関係 六七、九六〇円

これは前記一、1中にある東京への出荷二車分の運賃(昭三六、六、一五分、昭三六、一一、一一分)であり、備後通運K、K。神辺営業所長作成上申書二通(二〇二丁)と、営業費内訳表(証四二)の製品運賃勘定の記載とを照合することにより算出されるが、右上申書中の昭三六、七、三一および昭三六、一二、一〇各現金で支払われている分がこれに当る。なお一車分運賃三三、九八〇円であることは右証四二の記載から明白である。

大阪営業所関係 五〇、五〇〇円

これは大阪営業所の入荷帳(証一五)記載の各入荷分を運送した運賃であり、岡山県貨物未払台帳(証三九の一、二)より選び出すと、次のようになる。

〈省略〉

そして、右証三九の一、二と営業費内訳帳(証四二)の製品運賃勘定記載の岡山県貨物関係支払の記載とを照合検討すると、これら運賃が正規帳簿である右証四二に記載されていないことも明瞭である。

牧野屋、大和物産関係 二一、二〇〇円

これは前記一、3、記載各売上分の運賃であり、帳簿上正規出荷として処理されているものと混載出荷されており、正規売上分については営業費内訳帳(証四二)に計上処理されている。摘記すると次のとおりである。

〈省略〉

6 未払事業税認定損 一、六〇七、三五〇円

前期分所得額 一六、九九九、六〇〇円

うち五〇〇、〇〇〇円の七%

三五、〇〇〇円

〃 〃 八%

四〇、〇〇〇円

一、〇〇〇、〇〇〇円の一〇%

一〇〇、〇〇〇円

一四、九九九、六〇〇円の一二%

一、七九九、九五二円

期中納付額(減算) 三六七、六〇〇円

当期未払事業税 一、六〇七、三五〇円

以上

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